塗料には「弾性塗料」と呼ばれるものがあり、モルタルやコンクリートによく使用されています。
弾性塗料の中でもいくつかの種類に分類され、デメリットや使用上の注意点もあるので、お客様も特性について理解しておくことは大切です。
弾性塗料を知るうえで重要なポイントは以下の通りです。
・弾性塗料とは弾力性のある塗料のこと
・割れにくいが、汚れやすいというデメリットがある
・次回の改修時に旧塗膜を取らないと、弾性対応の塗料しか使えなくなるので注意
・弾性塗料の塗膜内部は水分に弱く、膨れが発生しやすい
このページでは、弾性塗料の種類や実際の膨れの事例などを紹介いたします。
弾性塗料とは
弾性塗料とは、弾力性のある塗料と言えばわかりやすいでしょうか?柔らかい塗料とも言えますね。
湿式(モルタル、コンクリート)は特にクラックが発生しやすいので、昔はよく使われていました。
今でもクラックを防ぐ意味では最適かもしれませんが、デメリットもあるので、現在は少なくなっています。(微弾性を除く)
弾性塗料の種類は次のようなものがあります。
・JIS A 6909 建築仕上塗材 可とう形改修塗材E(微弾性)
・JIS A 6909 建築仕上塗材 防水形外装薄塗材E (単層弾性)
・JIS A 6909 防水形複層塗材E(弾性)
・JIS A 6021 建築用塗膜防水材(高弾性)
他にも、弾性スタッコや弾性リシンなど種類はいっぱいありますが、基本的にこれで分類することができます。
最もよく現在使われているのが「JIS A 6909 建築仕上塗材 可とう形改修塗材E」通称、微弾性フィラーと呼ばれるものです。少しだけ弾性を持った塗料で、弾性塗料に分類されません。
10年程前に、塗料業界によく使われていたのが「JIS A 6909 建築仕上塗材 防水形外装薄塗材E」通称、単層弾性です。
それより以前は、「JIS A 6909 防水形複層塗材E」通称、弾性タイル、「JIS A 6021 建築用塗膜防水材」通称、高弾性と呼ばれるものが使用されていました。
弾性塗料のデメリット
塗料の性質上
弾性=汚れやすい、割れにくい
硬質=汚れにくい、割れやすい
と反比例するため、柔らかい弾性塗料は、一般の塗料と比較すると汚れやすいデメリットがあります。
もう一点、一度弾性のある塗料塗ると、次回の改修時に旧塗膜を取らない限り、弾性対応の塗料しか使えなくなってしまいます。特に高弾性は場合は、注意が必要です。
また、塗料全般そうですが、弾性塗料は外部から水分を取り込まないようにしているので、内部は水分に弱く、膨れを生じさせやすい面もあります。
少し余談ですが、塗料を柔らかくする際は、基本的に樹脂を多く入れるか、または可塑剤や熱可塑剤を入れています。
樹脂ならいいのですが、可塑剤や熱可塑剤を多量に含む塗料は、塗り替え時に膨れ、熱膨れなど様々な問題が発生しているのが現状です。
弾性塗料の膨れの事例
少し、弾性塗料の膨れの現象をご紹介します。
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JIS A 6909 建築仕上塗材 防水形外装薄塗材E (単層弾性)
コンクリート外壁面の塗膜膨れの状態
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JIS A 6909 防水形複層塗材E(弾性
軒裏に弾性塗料を塗った為に生じた塗膜の膨れの状態
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JIS A 6021 建築用塗膜防水材(高弾性)
ALCに高弾性のある塗料を使用した結果、熱発泡の状態
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JIS A 6909 外装厚塗材E(弾性スタッコ)
パネルの塗り替えに弾性スタッコを使用したため、可塑剤による熱発泡
まとめ
弾性塗料は、柔らかく弾力性を持つ塗料のことです。
塗膜が割れにくいため、ひび割れしやすいモルタルやコンクリートに用いられてきましたが、現在ではデメリットも多いため、微弾性を除いてあまり使用されなくなってきています。
弾性塗料を使用する際の注意点は、汚れやすい、次の塗り替え時にしっかりと古い塗膜を剥がさないと弾性に対応した塗料しか塗れない、水分によって膨れが生じやすいといったことが挙げられます。
モルタルやコンクリート外壁の場合は弾性塗料を提案されるケースもあるかと思いますが、デメリットや注意点もあるということを理解しておくようにしましょう。