外壁・屋根塗装の見積書は、専門的な内容で読み取れないと感じる方も多いですが、工事内容や価格が適正であるか見極めるためにも、事前に知識を備えておくことが重要です。
このページでは、見積書のチェックポイントや業者選びまでの流れ、工事金額の大まかな計算方法について詳しく説明いたします。
目 次
外壁・屋根塗装の見積書の内容を理解することの重要性
外壁・屋根塗装は、建物劣化具合や建物に合わせて、職人が現場で仕上げて完成するのもなので、一般的な製品などと違い定価というもは存在しません。
塗装を長持ちさせるためには、建物の下地や旧塗膜との相性をしっかりと見極める必要があり、金額だけをみて比較をしても、工事内容が適切かどうか判断することはできません。
また、見積書を見るときには、使用する材料や材料の単価、作業工程、施工面積なども細かく見ていく必要がありますが、塗装工事の見積書には統一的な基準というものがありません。
そのため、業者の判断でそれぞれ自由に内容を記載することが出来てしまうので、悪徳業者に騙されないためにもを見積書の内容をしっかりと理解しておくことが大切です。
自分で工事金額の見積もり金額を計算する方法
塗装工事の見積書は、以下のような公式で計算されています。
そのため、見積書を見る際まずは、「塗装面積」と「塗料の単価」が適正な数字であるかを確認する必要があります。それぞれの計算方法は以下の通りです。
延べ床面積によるおおよその面積の計算
延べ床面積とは、建物の床の合計面積のことで、例えば2階建ての戸建住宅で、1階の床面積が50㎡、2階の床面積が50㎡の場合、延べ床面積は100㎡ということになります。
また、延べ床面積が坪数でしかわからないという場合には、坪数に3.31をかけることで㎡の値に算出することができます。例えば30坪の場合、㎡の値では99.3㎡となります。
ただ、建物の延べ床面積を知っていても、塗装する部分の面積を知らなければ、見積書の面積が適正なのか知ることはできません。
外壁屋根塗装では、窓やドアなどの開口部を除いた部分を塗装するため、延べ床面積だけで正確な数字を出すことはできませんが、以下の計算方法である程度の数字を導き出すことは可能です。
悪徳業者の場合、外壁や屋根の塗る面積を必要以上に大きく記載して、合計金額を高く提示するケースがよくありますので、大まかにでも塗装面積を把握しておくようにしましょう。
計算式に使う「1.1~1.4」や「1.5」は、開口部の塗装しない部分の面積を引くための数字で、延べ床面積が大きければ大きいほど、1.1に近い小さい数字を入れた方が実測値に近づけることができます。
塗装面積から塗料の費用を計算する
悪徳業者の場合、塗料の単価を高くして合計金額を増やそうとするケースもよくあります。
そのため、塗料メーカーで定められた設計単価から大きくはなれる場合は安かろうと高かろうと、その業者に確認するべきかもしれません。
塗装に必要な塗料の費用は、以下の計算式で算出することができます。
塗料の単価は商品によって異なりますが、塗料のグレードごとに見ると現在主流のシリコン塗料で、2,300~3,000円/㎡が相場となります。
塗料のグレードごとの単価相場は以下の通りです。
塗料のグレード | 単価相場(/㎡) |
---|---|
シリコン塗料 | 2,300~3,000円 |
ラジカル制御塗料 | 2,500~3,000円 |
フッ素塗料 | 3,800~4,800円 |
遮熱・断熱塗料 | 3,000~4,000円 |
光触媒塗料 | 4,200~5,000円 |
無機塗料 | 4,500~5,500円 |
塗装業者に工事の見積もりを取る方法
塗装を行う業者の種類
塗装工事を請け負う業者は、主に「ハウスメーカー」「工務店」「総合リフォーム店」「塗装専門店」の4種類に分類されます。
1・ハウスメーカー
ハウスメーカーとは、全国規模で事業展開している住宅建築会社のことで、住宅の設計から建設、アフターサービスまで一貫したサービスを提供しているのが特徴です。
施工は下請けの業者が行うため価格は割高で、下請け業者によって品質にバラツキがある場合がありますが、大手メーカーの保証を継続できるというメリットもあります。
2.工務店
工務店とは、主に地域密着型で住宅の建設やリフォームを手掛ける中小規模の建築会社のことです。
特定の地域に根付いて営業をしている場合が多く、地域のニーズやネットワークを活かした柔軟なサービスが特徴です。
ただ、実際の施工は、ハウスメーカーと同様に下請け業者が行う場合がほとんどです。
3.総合リフォーム店
総合リフォーム店は、部分的な修繕や改修からキッチンや浴室などの内装リフォームまで、リフォームに特化した幅広いサービスを提供しているのが特徴です。
キッチンやバス、トイレ、窓など住宅のあらゆるリフォームと合わせて、塗装工事を依頼することができますが、実際の施工は下請け業者が行う場合がほとんどです。
4.塗装専門店
塗装専門店とは、塗装工事を専門に手掛けているため、塗装に対しての知識や技術力が高く、高品質な施工を期待することができます。
自社職人が施工を行うことで、工事を下請けに依頼する際の間接費が発生しないため、適正価格で工事を行うことができます。
金丸塗装は、この塗装専門店に該当します。
外壁・屋根塗装の見積もりの流れ
1.外壁塗装したい部分と時期を決める
まずは、大まかに塗装を行う時期を決めましょう。優良業者であればあるほど3か月先の予定まで埋まってしまっている場合もあります。
特に、雪や雨の影響が少ない春や秋の時期は人気な時期で、希望する時期に工事が行えるよう3か月ほど前から業者探しを行うといいでしょう。
2.業者を選ぶ
塗装工事を請け負う業者には、「ハウスメーカー」「工務店」「総合リフォーム店」「塗装専門店」と様々な業者がありますが、この中でのオススメは、塗装専門店です。
自社職人が塗装工事を専門に手掛けているため、専門性が高く低価格で高品質な施工が期待できます。
また、訪問販売は悪徳業者の温床になっており、訪問販売はトラブルが多く、施工金額も高額な傾向があるので、営業を受けた場合には注意が必要です。
3.工事の内容を伝え見積もり依頼をする
業者が決まったら、電話やホームページの申し込みフォームなどから連絡をして、現地調査を行う日程を調整します。
この時に、建物やお客様の情報、劣化が気になる箇所、塗装をしたい箇所などを業者が確認しますので、希望の塗料やデザインなどがある場合には業者へ伝えておきましょう。
4.現地調査
事前に決めた日程に、業者が訪問して現地調査を30分~1時間程度行います。
現地調査では、業者の担当者に直接質問することができますし、担当者や職人の対応や知識を知るきっかけにもなりますので、可能な限り立ち会いで調査を行うようにしましょう。
5.見積もり
現地調査が完了したら、担当者が持ち帰り見積書を作成します。見積書の提出までには、業者によって1週間〜2週間ほどかかります。
また、一般的に見積書の提出方法は、「直接手渡し」「郵送」「メール」などで、業者によっては郵送やメールは対応していない場合もあります。
希望の見積書の受け取り方法がある方は、事前に業者へ確認しておきましょう。
外壁・屋根塗装の見積書に記載される項目
外壁・屋根塗装工事の見積書には、主に以下の項目が記載されています。ただし、建物によっては存在しない箇所もあります。
また、どの業者でも、「足場」「高圧洗浄「外壁」「屋根」に関してはあまり書き方に違いはありませんが、付帯部に関しては業者によって呼び方や書き方が違う場合があるので注意が必要です。
項目 | 内容 | 単位 | 単価相場 | |
---|---|---|---|---|
仮設工事 | ||||
仮設足場 | 高所でも職人が安全に作業するために設置します。現在はビケ足場が主流です。 | m2 | 600~800円 | |
飛散防止ネット | 高圧洗浄や塗料が飛び散らないように建物の周囲を囲うネットです。 | m2 | 100~150円 | |
高圧洗浄 | 外壁や屋根、付帯部の汚れや古い塗膜を水圧で洗い落とす作業です。 | m2 | 100~300円 | |
外壁塗装工事 | ||||
下地調整・クラック処理 | ヒビなどの劣化部分を埋めるなどして外壁面を整える作業です。 | 一式 | 20,000~30,000円 | |
下塗り | 中・上塗りの密着性を良くするために、シーラー・プライマー・フィラーなど似た塗り材を使い、塗装面を整える作業です。 | m2 | 600~900円 | |
中塗り・上塗り | 中塗りと上塗りは同じ塗料を使用し、通常は塗料の商品名が記載されます。塗料には、グレードごとに耐用年数や価格相場が異なり、現在はシリコン塗料が主流です。 ※業者によって、上塗り1回目、2回目と記載したり、下塗りと合計で記載されている場合もあります。 | m2 | アクリル | 1,400~1,600円 |
ウレタン | 1,700~2,200円 | |||
シリコン | 2,300~3,000円 | |||
ラジカル | 2,500~3,000円 | |||
フッ素 | 3,800~4,800円 | |||
光触媒 | 4,200~5,000円 | |||
無機 | 4,500~5,500円 | |||
屋根塗装工事 | ||||
下地調整 | 釘打ちやサビ止めなどの補修、ケレンでサビを落としたり、目粗しで塗料の密着性が良くなるように表面にあえて凹凸の傷をつける作業です。 | 一式 | 10,000~30,000円 | |
下塗り | 外壁と同様に下塗り材を使用して、塗料の密着性を高めるために塗装面を整えます。 | m2 | 600~1,200円 | |
中塗り・上塗り | 屋根も外壁と同様に、中塗りと上塗りは同じ塗料を使用します。 | m2 | アクリル | 1,400~1,600円 |
ウレタン | 1,700~2,200円 | |||
シリコン | 2,300~3,000円 | |||
ラジカル | 2,500~3,000円 | |||
フッ素 | 3,800~4,800円 | |||
光触媒 | 4,200~5,000円 | |||
無機 | 4,500~5,500円 | |||
縁切り・タスペーサー | 屋根材の繋ぎ目の隙間が塗料により塞がるのを防ぐために、隙間を入れる作業です。コロニアルやカラーベストの場合に必要な作業です。 | 一式 | 30,000~50,000円 | |
シーリング工事 | ||||
目地 | サイディングの目地部分にシーリングを注入する作業です。施工方法は、増しと打ち直しの2種類があります。 | m | 打ち増し:600円前 後 打ち変え:1,000円前後 |
|
サッシ廻り | 窓枠に使われる建材のことで、樹脂、木製、アルミニウムがあります。こちらの境目も雨水が浸入しないようシーリングで塞ぎます。 | m | 打ち増し:600円前後 打ち変え:1,000円前後 |
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付帯部塗装工事 ※建物により異なります。 | ||||
破風 | 破風とは、屋根の先端部分で、ここを板で隠すための板が破風板です。 | m | 800~1,300円 | |
化粧銅差(幕板) | 1階と2階の中間に取り付けられた帯状の板のことです。 | m | 600~900円 | |
化粧枠 | 窓や玄関扉などの周辺を美しく見せるための仕上げ材のことです。 | m | 600~900円 | |
軒天・軒天井 | 軒天とは、屋根の裏側で外壁部分から外側に出ている部分のことです。 | m2 | 800~1,300円 | |
軒裏換気口 | 軒天に設置された換気口のことです。 | 個 | 2,000~3,000円 | |
雨樋・配管 | 雨樋とは、鼻隠し側にある雨水を排水するための建材のことです。 | m | 600~1,300円 | |
笠木 | ベランダやバルコニー、階段などの手摺上部に取り付けられている仕上げ材のことです。 | m | 400~800円 | |
水切り、水切り金物 | 屋根や窓の下、外壁と基礎の境目などに雨水は入らないよう設置される金物のことです。設置される金物はL字型の場合が多いです。 | m | 400~800円 | |
霧避け(庇)、勝手口庇、玄関庇 | 窓などの開口部の上部にある小さな屋根のことです。 | m | ||
雨戸 | ガラス窓の外側に設置する板戸のことです。大きく分けてシャッタータイプ、折り戸タイプ、引き戸タイプの3種類あります。 | 枚 | 大 | 6,500円 |
中 | 5,500円 | |||
小 | 4,500円 | |||
戸袋 | 引き戸タイプの雨戸を収納するための箱状の造作物のことです。 | 枚 | 大 | 6,500円 |
中 | 5,500円 | |||
小 | 4,500円 | |||
面格子(めんごうし) | 防犯用に窓に取り付けられた柵のことです。 | 個 | 5,000円~8,000円 | |
手摺 | ベランダや外階段に付いている柵のことです。 | 個 | 20,000~30,000円 | |
妻換気、換気フード | 換気のために外に付いているフードのことです。 | 個 | 2,000~3,000円 | |
玄関扉 | 扉がアルミ製の場合は、基本的に塗装はしません。 | 個 | 8,000~10,000円 | |
玄関脇格子 | 玄関に付いている柵のことです。 | 個 | 5,000円~10,000円 | |
出窓屋根 | 出窓についている屋根のことです。 | 個 | 3,000円~5,000円 | |
防水工事 | ||||
ベランダ床 | 施工方法は、FRP防水やウレタン防水などの種類があります。 | m2 | 3,000円~8,000円 | |
諸経費 | ||||
材料運搬費・交通費 | 資材を運ぶ費用やその移動にかかる交通費です。 | 式 | 20,000~30,000円 | |
廃材処理費 | 塗装工事で出た廃材の処分費用です。 | 式 | 10,000~30,000円 |
外壁・屋根塗装の見積書で注意するチェックポイント
外壁・屋根塗装の見積書の内容で、注意して確認しておくべきチェックポイントは次の通りです。
使用する塗料の具体的な製品名が記載されているか
業者の中には、「シリコン塗料」や「フッ素塗料」など大まかな塗料のグレードしか見積書に記載していない場合があります。
塗料は、同グレードの塗料だとしても、製品によって価格が異なるため見積書に具体的な製品名まで記載されているかしっかりと確認するようにしましょう。
屋根や外壁の塗装が三回塗りか
屋根や外壁の塗装は、「下塗り」「中塗り」「上塗り」の3回塗りが基本です。この工程をしっかりと守らなければ、塗料本来の機能が発揮できず、施工不良に繋がる恐れもあります。
商品によっては、メーカーから2回塗りや4回塗り以上などの指定があるものもありますが、塗料について不明な部分がある場合には、なぜその回数で行うのか業者に確認をしましょう。
一式という言葉が多く使われていない
単価や数量で表しにくい諸経費などは、数量や単価を一式として記載します。
ただし、それ以外の項目で一式が多用されている場合、どのような工程で何をするのかというのがわかりにくく、正確な数値で計算されていない可能性もあるので注意が必要です。
このような場合には、どのような根拠でこのような数値になっているのか確認するようにしましょう。質問をしても納得のいく回答を得られない場合には、その業者は避けた方がいいかもしれません。
値引き額が大きすぎないか
1000円程度の端数を値引きする程度であれば何の問題もありませんが、10万円以上の大幅な値引きを提示された場合には注意が必要です。
業者から大幅な値引きを提案されると、企業努力で安くしてくれたと感じてしまいますが、この場合は元々の見積金額が高めに設定されていた可能性が非常に高いです。
有効期限が1ヶ月以上あるか
通常、外壁・屋根塗装の見積書には1~3ヶ月程度の有効期限が設けられています。
その理由としては、見積もりをしてからあまりにも日数が経ってしまうと、劣化が進行したり塗料や資材の価格の変更などによって、提示した見積もりの内容では工事が行えない可能性があるためです。
この見積書の有効期限が、数日もしくは1週間程度の場合は、契約を急かすためにわざと有効期限を短くしている可能性があるので注意が必要です。
外壁・屋根塗装の見積もり金額に差がでる理由
外壁・屋根塗装の見積もり金額に差がでる理由としては、以下の理由が考えられます。
外壁・屋根の劣化具合
知識量や経験値は各業者によって異なるため、同じ建物であっても劣化具合の判断や見積内容に差が出る場合があります。
塗装する面積
建物の面積は、業者が手作業で計測していくため、数値に誤差が出ることで金額に誤差が生じる場合があります。
複数社から見積もりを取って、面積が全く同じ数値になるということはほぼありませんが、1社だけ数値が大きく違う場合には注意が必要です。
使用する塗料の違い
塗料は、商品ごとに価格が異なるため、業者の提案する塗料の違いによって見積もり金額に差が出る場合があります。
また、全く同じ塗料であっても、業者によって仕入れ値が異なるので、全く同じ単価にはならない場合が多いです。
利益率の違い
業者によって、見積書に乗せる利益率が違うため、利益を大きくしようとすればその分金額は高くなります。
また、下請けや孫請け業者を使っている場合には、中間マージンが発生するためその場合も金額は高くなります。
まとめ
外壁・屋根塗装の見積書には、決まった形式がないので分かりにくい部分は多いですが、注意するポイントを押さえておけば、見積書の内容を読み解くことができます。
業者によっても見積もりの内容や金額が異なるため、必ず複数の業者へ依頼し、どのような塗料で工程や施工箇所はどうするのかしっかりと打合せをして、比較・検討するようにしましょう。
当社代表は一般社団法人建物改修診断士協会を運営していますので、第3者の立場から業者を判断し選定もさせていただきます。
ぜひお気軽にご相談ください。