ハウスメーカーと言えば…セキスイハウス、大和ハウス、住友林業、三井ホーム、ミサワホーム、パナホーム、一条工務店、ヘーベルハウス…挙げればきりがありません。
今回はその中でも、大和ハウス、セキスイハウス、パナホームのハウスメーカーも実は困っている塗り替えについて説明いたします。
ハウスメーカー別のメンテナンス時のポイントは以下の通りです。
・大和ハウス:旧塗膜のDLコートが残っていると熱発泡が起きるので塗膜の撤去が必要
・セキスイハウス:塗膜の膨れを防ぐ為に透湿性の高い、薄い色の塗料がオススメ
・パナホーム:塗装では対応が難しい。サイディングボードの張り替えが必要
・ハウスメーカーの付帯部塗装は、塩ビ鋼板専用プライマーが適している
ハウスメーカーごとの塗装する際の注意点をご説明いたします。
ハウスメーカーの塗り替えの注意点
どこのハウスメーカーも当時の技術で一番良いと思い、塗料設計をされたんだと思います。でも、塗り替え時に異常がでてしまう…
ハウスメーカーで知らず知らずのうちに塗り替えをしてしまうと、お客様も施工店もどこに怒りをぶつけたらいいかわからなくなってしまうので、今回は私のわかる範囲で少しでもトラブルがなくなるように筆をとらせていただきました。
大和ハウス
平成5年~平10年頃に建てられた大和ハウスの建物に多い塗料で、DLコートと呼ばれるものがあります。
まずは、このDLコートなのかを図面で確認することが重要です。
DLコートとは、弾性のアクリルラッカー塗料になります。
塗り替えをしなければ何も起こらないですが、上から塗装すると場所によっては発泡現象が起きてしまいます。これが熱発泡です。
DLコートを塗っている塗膜が残っていると、熱発泡が起きますので、塗膜の撤去が必要になります。
セキスイハウス
セキスイハウスでサイディングパネルの上に、弾性スタッコと呼ばれるものが吹付けされている建物があります。
これ自体も塗り替えをしなければ何も起こらないです。
しかし、セキスイハウスで使われている弾性スタッコは可塑剤が非常に多く、その可塑剤が塗り替えによって塞がれてると膨張し、塗膜自体も膨れてしまいます。塗料に使われている可塑剤は、高沸点溶剤と呼ばれるものです。
塗膜の撤去が望ましいですが、弾性スタッコを撤去するのは並大抵のことでありません。
現在の塗装方法では、できるだけ透湿性の高い塗料を使い、薄い色をオススメします。
パナホーム
パナホームのハイセラコートウォールと呼ばれる建物は、建築当初はメンテナンスフリーと呼ばれていました。
ハイセラコートウォールは、無機塗料(ガラスのような硬い塗料)でサイディングボードが工場塗装で仕上られています。
無機塗料だけの性能だけ見ると、硬質で汚れない、劣化しにくいといった最強の塗料ですが、落し穴があったんです。
サイディングボード収縮や構造の揺れに無機塗料がついていけなくなってひび割れが発生し、さらにサイディング自体に水を含んでボロボロになるケースが報告されています。
ボロボロになってしまうと、サイディングボードの交換しかありません…
塗装方法は今まで、特注の3液シーラーに全面研磨、高弾性中塗り、強溶剤のトップコートとかなり無理な塗装仕様でしか対応できませんでした。
最近は難粘着用のシーラーがでてきていますので、そちらでテスト施工し、施工する方法があります。
そもそもメンテナンスフリーというのは、基本的にありません。
どこかのタイミングでメンテナスをするように建物の設計をするべきだと、私は思っております。
建物には揺れや収縮もあり、必ずどこかで劣化現象が起きてしまいます。そのことを踏まえた上で、メンテナンスのしやすい建物の設計が大事なんだと思います。
付帯部塗装の注意点
これはハウスメーカーに限ったことではないのですが、ハウスメーカーに特に多いので、注意しないといけない所があります。
それは、付帯部と呼ばれる所(屋根、幕板、鼻隠し、破風板、土台水切り、シャッターボックスなど)に塩ビ鋼板(塩ビゾル鋼板)が使われていることが多い点です。
塩ビ鋼板とは、樹脂被服鋼板とも呼ばれており、一般的な鋼板に塩化ビニール樹脂をコーティングしたものです。
なぜダメなのかというと、塩ビ鋼板は上から塗装すると、塩ビに含まれている可塑剤の影響で軟化を起こし、ベタつきやブリード現象、塗膜が膨れたりする不具合が発生するからです。
左の写真では、シャッターボックスの鋼板に塩ビゾル鋼板が使用されています。日本ペイントさんの塩ビゾルプライマーを使用し、仕上げ塗料にファイン4Fセラミックを施工しました。ちなみに建物は大和ハウスさんです。
塩ビ鋼板専用プライマーを選ぶ
塩ビ鋼板の特長として、カタログの左端の方にある。エンボス調なっているのがわかりやすいと思います。
塩ビ鋼板専用プライマーは様々な塗料メーカーからが発売されていますので、上塗りに適合する下塗りをきちんと選定する必要があります。
【例】
日本ペイント:塩ビゾルウレタンプライマー
SK化研:ビニタイトプライマー
スズカファイン:リフノン
日本特殊塗料塗料:NT塩ビ鋼板用プライマー
ダイフレックス:バリアープライマー
あと私の知っている限りでは、溶剤がダメな場所では、インターナショナルペイントのIP軟質塩ビコートsiが唯一、下塗り要らずで水性の上塗りで仕上げることができます。
また、実際の現場では、きちんと塩ビ鋼板専用の下塗りを塗られていないケースが多く、塩ビの被覆に少し傷あったりすると、後に剥がれてしまいます。
その場合は、めくれるところは全てめくらないといけない等の下地処理が重要になりますが、きちんと行う業者さんが少ないのが現状です。(知らない場合が多い)
まとめ
ハウスメーカーはいくつかありますが、今回は大和ハウス、セキスイハイム、パナホームについてご説明いたしました。
大和ハウスでDLコートを塗装している場合は、塗膜が残っていると熱発泡が起きてしまうため、しっかりと塗膜の撤去をすることが重要です。またセキスイハウスの住宅は、塗膜の膨れを防ぐ為に透湿性に優れた塗料を選ぶといいでしょう。
パナホームはサイディングがボロボロになってしまう不具合が生じ、塗装では対応が難しい可能性があります。そのため、塗り替えではなくサイディングボードの張り替えが必要となります。
そして、付帯部塗装に関しても、特にハウスメーカー場合は塩ビ鋼板が使用されていることが多いので、専用プライマーで塗装する必要があります。