外壁や屋根は、常に紫外線や雨風の影響で劣化していきます。そして、劣化症状として挙げられるものは数多くあり、それぞれ原因や補修方法なども異なります。
劣化症状はいくつかありますが、特に注意すべき症状は次の通りです。
・クラック(ひび割れ):水が浸入して雨漏りやコンクリートの中性化を促進に繋がる
・シーリングの剥離:気密性、防水性が低下して雨水が浸入する恐れがある
・下地調整材の浮き:放置していると剥落等の危険性がある
・塗膜の剥離:塗料の機能が失われているので塗り替えが必要
・錆び:放置しているとサビが広がったり、サビの進行で建材に穴が開く
・コンクリートの押出し及び露筋:コンクリートが押し出されて欠落する恐れがある
・タイルの浮き、剥離:付着力が低下してタイルが剥落する可能性がある
このページでは、外壁や屋根の劣化現象について説明いたします。
目 次
チョーキング
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塗膜のチョーキング(白亜化)が見られます。
塗膜の初期の劣化状態で、素地の保護機能が失われつつあります。
原因
紫外線・温度・水などが長時間作用して、塗膜表面の樹脂や顔料が劣化し、主として白色の粉化物が表層に付着したものです。
対策
塗替による素地の保護機能と美観の回復が必要です。改修時には塗膜密着不良防止の為、チョーキング層を除去した後、耐候性を考慮した仕様による塗装を実施して下さい。
クラック(ひび割れ)
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クラック(ひび割れ)が見られます。
放置しておきますと、大気中の炭酸ガスや水の浸入によりコンクリートの中性化を促進させます。
対策
0.5mm以上のクラックは、エポキシ樹脂注入やUカット処理による補修が必要です。0.5mm未満のものはフィラー等のすり込みにて処理します。
シーリングの劣化
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本来持つべき伸縮力の低下や破断、ブリード(にじみ)による汚染などが発生します。
原因
経年劣化や外的要因です。
対策
シーリング材は、建造物の気密性・水密性を保つために非常に重要な役割を果たすものなので、改修工事の際は打替えを前提とします。
シーリング材の影響による塗膜汚染
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外壁が著しく汚染しており、美観を損ねています。
原因
窓下端のシーリング材の可塑剤が降雨などにより壁をつたって流れ、表面に粘着が出来ることにより、空気中のホコリなどが付着し汚染したものです。
対策
アクリルウレタンシーリング材などの比較的、可塑剤が表面に出にくいシーリング材で改修を行って下さい。
シーリング上の塗膜割れ
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シーリング上の塗膜が割れている様子です。
原因
ワーキングジョイントのシーリング材が動き、塗膜がついていけなくなってる状態です。
対策
シーリング材そのものは劣化していないことが多いです。シーリング材に追従できるような微弾性フィラーを塗布することを勧めます。
シリコンシーリングによる剥離
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シリコンシーリングによる剥離です。
原因
シリコンシーリングは耐候性等に強いが、塗膜が密着しないため剥離します。
対策
シリコンシーリング用のプライマーを塗装するか、シリコンシーリングを撤去します。
下地調整材の浮き
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コンクリートの巣穴や段差を調整する為のセメント系下地(モルタル)が浮いた状態となっています。
そのまま放置しますと剥落等の危険性があります。
原因
建物に加わる外力やクラック等からの水分の浸入等により、相互の付着力が低下し密着不良を起こしたものです。
対策
エポキシ樹脂点着を行うか、浮きモルタル除去の後に、エポキシ樹脂モルタル又はセメント系下地調整材等で成型を行います。
塗膜の亀裂
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塗膜の亀裂が見られます。
美観が損なわれており、素地の保護機能が低下しています。
原因
温度差や乾湿の繰り返しによって、塗膜が劣化し割れたものです。
対策
塗替による素地の保護機能と美観の回復が必要です。旧塗膜からの剥離防止の為、脆弱塗膜を除去した後、塗装して下さい。
塗膜の浮き
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塗膜の密着不良により浮きや剥離が発生している状態です。
素材の保護機能の低下が考えられます。
原因
紫外線などの経年劣化による付着低下や雨水等の水分の影響が考えられます。
対策
浮き部等密着不良箇所及び剥離箇所周辺の脆弱塗膜を完全に除去し、パターン回復後塗装に入ります。
塗膜の剥離
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塗膜と鋼材の層間において塗膜の付着力が低下し、一部で塗膜が剥離した状態です。
原因
結露や紫外線の影響による塗膜の経年劣化や、物が当たって生じた傷等が要因と考えられます。
対策
脆弱塗膜及び密着不良塗膜は完全に除去します。鉄面との密着力にすぐれた仕様の選定が求められます。
塗膜の剥離(塩ビ製)
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塩ビ製樋と塗膜の層間での剥離が見られます。
原因
塗膜面と塩ビ製素材の層間で密着不良が生じたことで、塗膜が剥離したと考えられます。
対策
脆弱塗膜と密着不良塗膜を完全に除去し、撤去塗膜部位の段差補修を行ない、耐候性に優れたウレタン系の塗膜を塗装して下さい。
塗膜白変
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塗膜が白変し、美観を損ねています。
原因
結露による乾湿の繰り返しによって、大気汚染物質と塗料中の体質顔料の反応物(主に石膏)が推積したものと推定されます。
対策
塗替時の塗膜密着不良防止の為、白変部分をペーパーやマジックロン等により除去して下さい。
変褪色
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塗膜の褪色が見られ、建物の美観を損ねています。
原因
紫外線や雨水等の影響により、塗料中の樹脂や顔料が劣化して起こるものです。
対策
紫外線や雨水等の影響を受けやすい箇所には、高耐候性塗料(フッ素、シリコン、ウレタン等)の採用が必要です。
褪色
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塗膜の褪色が見られ、建物の美観を損ねています。
原因
紫外線や雨水等の影響により、塗料中の樹脂や顔料が劣化し起こるものです。
対策
紫外線や雨水等の影響を受けやすい箇所には、高耐候性塗料(フッ素、シリコン、ウレタン等)の採用が必要です。
藻・かびの付着
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藻・かびの付着により美観を損ねています。
原因
藻・かびは、おおよそPH中性域及び適度な陽光・温度(25~30℃)と湿気がある条件のもとで発生します。
対策
高圧洗浄にてコケ・藻を除去(場合によっては次亜塩素酸ソーダ水溶液等により漂白)し、殺菌処理の後に塗装を行って下さい。
雨だれ汚染
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筋状に汚れが付着し、建物の美観を損ねています。
原因
雨水により汚染物質が流され付着したものです。
対策
汚染物質の滞留を防ぐ為、天端等は平滑に仕上げて下さいまた、汚れを低減させる為には、低汚染型塗料での塗り替えをお勧めしています。
錆汁汚染
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クラックから赤褐色の汚染物質の流出が見られ、建物の美観を損ねています。
原因
発錆鉄筋の錆汁流出や酸性雨の影響によるものです。酸性雨の影響とは、コンクリート成分中に含まれる炭酸カルシウムが酸性雨により溶出分解し、雨水中に溶けている鉄イオンが酸化し酸化鉄となる状態を指します。
対策
水分等の流入を防止する事が必要です。(補修方法はクラック補修に同じ)
発錆
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錆の発生が見られます。
原因
鉄が水分や空気中の酸素と反応し、酸化鉄となった状態です。
対策
塗膜の防錆性能は、素地の除錆グレードによるところが大きいので、改修時には十分なケレンを行った後に塗装を実施する事が必要です。
アルミニウム発錆
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アルミニウムに錆びの発生が見られます。
原因
アルミニウムが水分や空気中の酸素と反応し、酸化アルミニウムとなった状態です。
対策
塗膜の防錆性能は、素地の除錆グレードによるところが大きいので、改修時には十分なケレンを行った後に塗装を実施する事が必要です。
サイディングボードのクラック
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サイディングボードにクラックが発生しています。
原因
地震等の建物に加わる外力や木製胴縁の乾燥時、季節で異なる温度乾湿の差によって起こる体積収縮等が要因で、発生するものと考えられます。また、サイディング巾が短いことが原因の場合もあります。
対策
Uカットしエポキシプライマー塗布後、パテかいを行います。
サイディングコーナー
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サイディングコーナー用の角度がない為、シーリング剤の納めで、シーリング劣化が著しいと考えられます。
原因
サイディングコーナーにない角度の為です。
対策
シーリングだけではなく、板金、アルミ、タイル等による保護を推奨します。
サイディングボードタッチアップ
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窯業サイディングの色が変色している状況です。
原因
新築時に傷が入り、タッチアップしたことによることが原因です。
対策
クリア塗装は不可。エナメル質の塗装を勧めます。
コンクリートの押出し及び露筋
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躯体内の鉄筋に錆が生じコンクリートが押し出された状態です。欠落する恐れがあります。
重度の場合は、鉄筋が露出した状態となっています。
原因
1.クラック(ひび割れ)等から雨水や炭酸ガスが躯体内に浸入。
2.コンクリート中性化が促進される。
3.躯体内の鉄筋に錆が発生する。
4.発錆により、鉄筋の体積が膨張。
5.鉄筋周辺のコンクリート片が押し出される。といったプロセスを経て起こったものと推察されます。対策
押出されたコンクリートを削り取り、露出鉄筋の防錆処理後、エポキシ樹脂モルタルで成型します。クラック追従性を考慮した改修仕様の選定、防水施工箇所の見直し等が求められます。
磁器タイルのひび割れ・浮き・剥離
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各層の付着力が低下し、ひび割れや浮き、場合によってはタイルが剥落します。
磁器タイルの施工方法によって、現象に多少の違いはあります。
原因
経年劣化や外的要因(地震、気温や湿度の差による伸縮応力)などです。
対策
磁器タイルの浮き箇所を確認し、目地からエポキシ樹脂などの注入(ピン打ち併用)を行います。また、目地からの劣化(漏水・ひび割れなど)を防ぐため、磁器タイル目地コーティング工法にて施工します。
タイル目地の白華現象
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タイル目地に白い結晶状の物質が付着しています。
原因
コンクリート内のアルカリ成分が、タイル目地に添って水分と共に流出し結晶化したもので、タイル目地からの雨水の浸入が考えられます。
対策
塗膜によるタイル目地の保護が必要です。アクリルウレタンシーリング材などの比較的、可塑剤が表面に出にくいシーリング材で改修を行って下さい。
補修跡
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部分的な補修塗装により、建物の美観を損ねています。
原因
旧塗膜と補修塗膜間に経時による色相差が生じたり、塗膜の汚染の差によるものです。
対策
全体的な塗装で色相差をなくして、美観を回復させて下さい。
縁切りの不足
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薄型化粧スレートの重なり部の状況です。
原因
薄型化粧スレートの重なりの部分が塗膜で塞がれると、通気が出来なくなり劣化します。
対策
塗装時にタスペーサーを使用することにより通気を確保できます。今回は野地板の腐食が始まっていると予測できるため、カバー工法を推奨します。
樹脂系建材の劣化
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樹脂系建材が劣化し、美観を損ねています。
原因
樹脂系建材が経年による劣化または、可塑剤のぬけです。
対策
塗装による保護もしくは交換を行い、美観の回復をします。
腐食
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鉄部が腐食しています。
原因
紫外線や雨水等の影響により塗料中の樹脂や顔料が劣化し、鉄が錆びて起こるものです。
対策
紫外線や雨水等の影響を受けやすい箇所には、高耐候性塗料(フッ素、シリコン、ウレタン等)の 採用が必要です。取替が必要になります。
木材の腐敗寸前
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木材が腐敗する寸前です。
原因
紫外線や雨水等の影響により、腐敗しかけています。
対策
放置していると木材が腐敗するので、防腐剤を含有している木材専用塗料を塗布することを推奨します。木材は定期メンテナンスが必要で、5年〜7年に一度の塗替えを推奨しています。
まとめ
劣化症状と言ってもあらゆる症状が発生するため、状況をしっかりと見極めて適切なメンテナンスを行うことが重要です。
チョーキング現象や色褪せ、コケやカビの発生などは、塗装を検討し始めるサインを考えておくといいでしょう。シーリングの劣化が目立ったきたり、建材自体に割れや浮きなどがみられる場合は、早めの対処が必要です。
劣化を放っておくと雨漏りが発生したり、躯体に大きなダメージを与えてしまう恐れがあるため、少しでも気になる点がある場合は専門の業者に調査してもらうことが大切です。